歌川国芳(1797-1861)は、江戸後期に活躍した浮世絵師の最後の世代に現れました。そして、多種多様な国芳の作品は、それまでの浮世絵に無かった斬新な発想に基づき、浮世絵界に新風を吹き込んだのです。力強いポーズをとる英雄を大胆な構図と派手な色使いで描いた武者絵は、異色の魅力を放ち、国芳を一躍人気絵師に押し上げました。豊かな発想力は三枚続きの大画面を活かした大胆な武者絵や、西洋画法を取り入れた風景画、市井の女性の日常を捉えた美人画、ウィットに富んだ戯画などに存分に発揮されています。
国芳の作品にみられる新奇な表現は、見る者を楽しませる魅力にあふれています。本展では、幅広い画題を手掛けた国芳の武者絵、戯画、美人画、風景画、役者絵に肉筆画も加えた約400件の作品を展示し、国芳の全貌に迫ります。
見どころ
■くじけぬ絵師根性―役者絵、武者絵
長く続いた下積み時代にくじけず筆力を鍛え続けた国芳。「水滸伝」の英雄たちを描いた30代初め、「武者絵の国芳」としてようやく浮世絵界に名を馳せました。そんな不屈の精神で、幕府の禁令もなんのその。天保の改革により役者や遊女を描くことが禁じられても、奔放な発想力で苦境を乗り越えました。

[前期展示]《本朝水滸伝豪傑八百人一個 天眼礒兵衛》天保2年(1831)頃、個人蔵

[通期展示]《坂田怪童丸》天保7年(1836)頃、個人蔵
■にゃんこ百面相―戯画、美人画
国芳は無類の猫好きでした。猫を美人の引き立て役としてだけでなく、主役として描き出したところが国芳の新境地。リアルな猫から人間に扮した猫まで、実に表情豊かな猫たちがあちこちに登場します。新発見のおもちゃ絵《流行猫の変化》もお見逃しなく。

[通期展示]《流行猫の変化》天保12~13年(1841〜42)頃、個人蔵

[前期展示]《山海愛度図会 七 ヲゝいたい 越中滑川大蛸》嘉永5年(1852)、個人蔵
■予想外にぶっとんだ構図―武者絵、風景画
国芳が切り拓いたダイナミックな三枚続きの手法は、浮世絵の常識を打ち破りました。
画面を貫く巨大クジラや巨漢は見る者を圧倒します。この構図力は風景画にも発揮され、西洋絵画の表現を用いながら、独特なアングルから捉えた景色も魅力の一つです。

[通期展示]《宮本武蔵の鯨退治》弘化4年(1847)頃、個人蔵

[通期展示]《忠臣蔵十一段目夜討之図》天保2~3年(1831〜32)頃、個人蔵
■しゃれをきかせて笑いを誘う―戯画
楽しい笑いも機知に富んだ風刺もお手の物。
国芳にかかれば猫や金魚、狐に狸などの生き物、ひょうたんや化粧道具のような身近な品々に至るまでコミカルに擬人化され、恐ろしい妖怪も愛嬌たっぷりに。江戸の人々を笑わせた国芳のアイデアには、令和にも響くユーモアが満載です。

[前期展示]《みかけハこハゐがとんだいゝ人だ》弘化4年(1847)頃、個人蔵

[後期展示]《きん魚づくし ぼんぼん》天保13年(1842)頃、個人蔵
第一章 役者絵―名優奇優を描く
Actor Prints―Superb Actors, Masterly Depictions
第二章 武者絵・説話―躍動する奇傑
Warrior Prints and Narrative Images―Genius in Motion
第三章 風景―新奇の構図
Landscapes―Novel Compositions
第四章 風俗・情報・資料―広がる奇想
Everyday Life and the News―Imagination Conveyed
第五章 摺物と動物画―こだわりの奇品
Surimono and Animal Prints―The Rarest of the Rare
第六章 美人画―粋と奇麗
Beauty Prints―Chic and Lovely
第七章 肉筆―奇才の筆
Kuniyoshi’s Hand-drawn Paintings―The Rare Brushstrokes of a Genius
第八章 戯画―奇想天外なユーモア
Comic Prints―Unparalleled Wit